78歳 男性 抗がん剤治療による副作用(末梢神経障害)に対する鍼灸治療
<主訴>
抗がん剤治療による副作用(末梢神経障害)
<現症>
- 2021年に大腸がんの手術を行い、抗がん剤の治療を始める。
- 月1回抗がん剤点滴投与しその後2週間の抗がん剤を服用する治療スケジュールで治療が行われている。現在も継続治療中。
- 左右上肢(手掌部~指尖)、左右下肢(下腿部~足部)の末梢でしびれが強く出ている状態。
- 上肢、下肢ともに強い冷感と感覚鈍磨、むくみが出ている。
- スリッパを履いている感覚がない。脱げても分からない。
<検査>
- 触覚:前腕部は左右差なし 手背部も左右差なし
- 手掌部の感覚は薄くあるが、触れるとしびれが増強する
- 下腿部、足底は左右とも触てる感じはわかるが、感覚ほぼない。
- 振動覚:左右上肢(尺骨頭)と左右下肢(腓骨頭と内果)に振動の有無及び、消失までの秒数を測定。
・上肢(尺骨頭):左8秒 右10秒
・下肢(腓骨頭):左感覚なし 右感覚なし
・下肢(内 果):左感覚なし 右感覚なし - 握力:左20㎏ 右22㎏
<施術>
- 上肢は正中神経を意識し置鍼+パルス(2Hz×15分)
⇒握力、しびれや感覚異常の改善を目的に行う - 下肢は下腿部及び足部の経穴(陽陵泉-太衝、陰陵泉-太渓)に置鍼+パルス(2Hz×15分)
⇒下肢のしびれや感覚異常の改善を目的に行う - 施術は週1回のペースで継続して行う。
<経過>
▼初回(5/27)施術後
- 振動覚:
上肢(尺骨頭):左8秒 右10秒
⇒左12秒 右13秒
下肢(腓骨頭):左感覚なし 右感覚なし
⇒変化なし
下肢(内 果):左感覚なし 右感覚なし
⇒変化なし - 握力:左22㎏ 右20㎏
⇒左25㎏ 右25㎏ - 自宅でのケアとして、足浴を毎日可能な限り行うように指示を行う。
▼2回目(6/3)
- 大きな変化はないが、足のむくみはましになったとのこと。
- 足の冷え感も少し改善されたように感じる。
- 施術は前回と同様に行う。
【施術前後】
振動覚:
上肢(尺骨頭):左10秒 右9秒
⇒左11秒 右10秒
下肢(腓骨頭):左感覚なし 右感覚なし
⇒変化なし
下肢(内 果):左感覚なし 右感覚なし
⇒変化なし
握力:
左19㎏ 右19㎏
⇒左20㎏ 右21㎏
▼3回目(6/11)
- 以前より歩きやすくなった感じがするとのこと。
- 施術は前回同様に行う。
【施術前後】
振動覚:
上肢(尺骨頭):左14秒 右12秒
⇒左13秒 右13秒
下肢(腓骨頭):左感覚なし 右感覚なし
⇒変化なし
下肢(内 果):左感覚なし 右5秒
⇒左5秒 右7秒
握力:
左24㎏ 右25㎏
⇒左23㎏ 右22㎏ - 施術前の検査で右足の振動が少し感じるようになっていた。
- 施術後は左右の下肢で振動が感じるようになる。
▼4回目(6/18)
- スリッパが脱げる感覚が戻ってきているとのこと。
振動覚:
上肢(尺骨頭):左11秒 右11秒
⇒左12秒 右11秒
下肢(腓骨頭):左感覚なし 右5秒
⇒左7秒 右5秒
下肢(内 果):左感覚なし 右感覚なし
⇒左感覚なし 右6秒
握力:
左20㎏ 右20㎏
⇒左24㎏ 右25㎏
▼5回目(6/25)
- 6/22に抗がん剤点滴を行う。翌日から状態が悪くなる。
- しびれが戻ったように感じるとのこと。
- 施術は同様に行う。
振動覚:
上肢(尺骨頭):左9秒 右10秒
⇒左10秒 右11秒
下肢(腓骨頭):左4秒 右6秒
⇒左8秒 右8秒
下肢(内 果):左4秒 右4秒
⇒左5秒 右8秒
握力:
左23㎏ 右23㎏
⇒左20㎏ 右22㎏
<考察>
論文で鍼による刺激は神経血流や筋血流を増加させることや、鍼通電刺激によるしびれや痛みの軽減も末梢の血流増加が関与しているとの報告があったことから、手足末梢の経穴に鍼通電を行った。結果として症状にばらつきはあるが、少しづつ感覚に変化が出てきているため、引き続き施術を継続していく。
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