34歳 女性 母乳分泌不足・肩痛・背部痛
<主訴>
母乳分泌不足・肩痛・背部痛
<現病歴>
2020.9.2第1子(女)を2944gで出産。
産後母乳の分泌量が上がらないため助産師の紹介で来院。
母乳分泌を促進するために「基底部」のケアを希望された。
※「基底部」乳腺と大胸筋の間の組織(胸筋膜)
<既往歴>
自然気胸(左肺)
<肺活量>
73%(80%以上が正常)
<社会歴>
産休中 OL(デスクワーク)
<家族歴>
特になし
<内服薬>
なし
<臨床所見>
・分泌量:20g/1回授乳(産後1ヶ月半)
・身長:165cm 体重:49kg
・血圧:R 102/70 L 98 /67
・脈拍:90
・姿勢:猫背・脊柱左凸・前腕内旋傾向
・瞳孔:直接対光反射 縮瞳3秒維持 右眩しく感じる
・呼吸:呼気 20秒
・可動域:上半身回旋制限(左右回旋30°)
・触診:僧帽筋圧痛
上肢水平外転時 大胸筋の緊張
上肢外旋時、腕橈骨筋近位部(尺沢) 圧痛(R>L)
脊柱胸椎左凸 胸椎5?6?7のフィクセーション
・赤ちゃんの体重:4100g(10月20日)
・その他:母親が脱力することが難しい
母親の頭皮が硬く感じた
<治療>
目的:基底部の動きの改善(血液循環、リンパ循環の改善)→母乳分泌を促進する
1)胸郭の動きを整える
2)大胸筋の滑走を促す
3)呼吸を整える
<施術>
1)胸郭の動きを整える
・仰臥位
①第7肋骨から第10肋骨まで術者の手の平で保持し腹式呼吸を指導
②上肢回外姿位をとり腹式呼吸
③棘突起を反対側から4指でコンタクトし左右へ振動(肋椎関節を広げるイメージ)
2)大胸筋の滑走を促す
・側臥位
①鎖骨近位端と遠位端を保持し長軸に伸長
鎖骨のテンションの緩みを感じ取れたので終了
→腕橈骨筋近位部の圧痛をチェック(施術後は圧痛が軽減)
患者は腹式呼吸を意識してもらう
3)呼吸を整える
①施術中腹式呼吸を意識
②自動運動
クローズからオープンの姿勢(上肢外旋動作)
腹式呼吸(2・2・4呼吸)
2回目(令和2年10月31日)
S>
・脱力と呼吸を意識して過ごした
・身体の緊張か少し和らいだ感じがする。
・2?3日間は分泌がUPしたように感じた
・助産師評価(10月28日)基底部の貼り付きがフワッとした感じになった。
O>
・血圧:R 112/76 L 106 /74
・脈拍:93・92
・呼吸:呼気 26秒
A>
自宅で脱力と呼吸を意識することにより身体の緊張が和らぎ、呼気時間が20秒から26秒と伸びたと思われる。
しかし、前腕の外旋制限があり胸筋の緊張が強く、上半身の回旋制限を認められるとめ初回と同様の施術を行った。
<結果>
2020年11月5日の助産師の報告によると「基底部」の動きが感じられ、直母が20g→31gまで上がったとのこと。
これ以降定期的に施術を受けられるようになった。完全母乳は無理だったがミルクを併用しながら子どもを育てている。
<考察>
母乳の分泌を促進するには、赤ちゃんの吸う力(吸啜)が一番大切でる。そのためには質のよい母乳が作られる必要がある。産後10日以内に適切なサポートが受けられると赤ちゃんの吸啜と母乳生成がうまくいき、母乳育児はスムーズに進むと言われている。
本症例は産後約2ヶ月後の施術、2回の自然気胸、胸郭の左右違い、肺活量の低下があったクライアントであった。
完全母乳になるには時期的な問題が引っかかった。母乳を生成するための血液、リンパ循環を改善するための施術を行いない、助産師と協同でサポートを行った結果、分泌量を増やすことが出来たと思われる。「1滴でも多く母乳をあげたい!」というお母さんの希望を叶えることは出来たのではないかと思っている。
今回の施術した部位(胸郭・上肢)は助産師の「基底部」に良い刺激を与えることが出来たと推測している。
今後も臨床を重ね、適切な施術を提供できるようにしていきたい。
赤ちゃんの体重増加(↓)
<参考>
◆一般的な哺乳量の例
※新生児の体重によって変化します。
体重3kg:60ml/1回
体重3.5kg:70ml/1回
体重4kg:80ml/1回
営業日カレンダー
…毎週日曜は定休日
…午前は休診
…午後は休診(毎週水曜、土曜と祝日の午後は休診)